出産予定日の当日に④

出産予定日の当日朝9時。

子宮口は全開。

後はいきんで出るだけの状態だった

 

しかし

無痛分娩の麻酔が効きすぎるのか、

そもそも陣痛が弱い体質なのか

全く赤ちゃんが降りてくる感じがしない

 

とにかくいきんでみたものの、

何か違うところに力が入っているような…

 

色々いきみの仕方を変えてみたものの

なかなか赤ちゃんの気配がない。

 

そうこうしているうちに30分以上が経過した。

 

「麻酔が効いているうちに

出てきてほしいんだけど…」

と、助産師さん。

 

そうだった!

麻酔もそう何時間も効くものではなかった!

と私は思い出した。

 

まずい、このまま出てこないと

追加で麻酔を打つか、

痛みがモロに来たところで、いきまないと

いけない…

 

陣痛が弱いのをみると

多分、麻酔の追加はないだろう。

 

何としても急いで出さなくては…

 

私に焦りが出てきた。

 

しかし

何度いきんでもなかなか出てこない。

 

麻酔を入れてから1時間くらい経ち、

「陣痛促進剤を入れていきましょう。

少しずつ入れていくので、大丈夫ですよ」

助産師さんに言われた。

 

この促進剤が入ると

陣痛は更に痛みを増し、

「うっ、こんなに痛いタイミングで

いきむなんて…無理だ」

と私は半ば半ベソ状態になり、

軽くパニックに陥っていた。 

 

色々な出産体験記を事前に読んでいたが、

いきみ方がわからないなんて事例は

なかったぞ!

 

しかも持病の花粉症のせいで

鼻呼吸がしにくく、

口呼吸に頼ってしまったことで、

更に過呼吸気味になってしまい、

どんどん体力が奪われていく。

 

いきみ始めてから2時間が経過。

赤ちゃんの頭が見えてきたものの、

陣痛が引くと赤ちゃんも引っ込んでしまう。

この頃にはとっくに麻酔も切れ、

促進剤のせいで陣痛も痛みMAXになっていた。

 

生き地獄ってきっとこんな感じなんだろう。

こんなに辛いのに、

逃げるという選択肢は無い。

 

「うーん、もう限界かな。

あと15分頑張って出てこなかったら、

先生に引っ張ってもらいましょう。

それでもいいですか?」と

助産師さんに聞かれ、

私はハイと言う体力もなく

ただ頷いた。

 

もうこれ以上は無理。

先生、早く引っ張ってくれ…

 

そう思っている間も

助産師さん達は赤ちゃんを、出そうと

バタバタしている。

 

「上からお腹押してもいいですか?」

と可愛らしい小さめの助産師さんに言われ、

 

内心、

 

ばか、

私がこんなに全身全霊かけて

いきんでも出ないのに

あなたみたいな軽い人ではダメ!

もっと太めの人じゃないと!!

と思ったが、

もう何も言う体力も気力もない。

 

お腹を押されて

ただただ いきんでみたものの、

やはり出ず、

先生に引っ張ってもらうことになった。

 

先生は更に10分後くらいにきて

黙って

吸引分娩の準備に取り掛かった。

 

もともと診察の時から

必要最小限の事しか喋らない先生だったが、

やはり出産時も何も喋らない。

 

どうなってますか?と聞く体力もなく

ただ最後の力を、振り絞って

いきんでいると、

先生が

 

ザッ

 

と赤ちゃんを、取り上げた。

 

私も、立ち会った旦那も

突然だったので

 

えっ 

 

 

となり、呆然としたが、

助産師さんが

おめでとうございます!

写真は良いですか?!

 

と声をかけてくれ

正気に戻った。

 

しばらくすると、

赤ちゃんの元気な声が聞こえてきた。

 

そうか、無事に産まれた…

 

私は安堵したが、

先生が黙々と下の処理をしている。

何やら縫っているようだ。

後で助産師さんに聞いたが、

いつのまにやら切開していたらしい。

 

「はい、終わりましたよ」

と言われるまで5分位だっただろうか

 

何かもう少し説明が欲しいなと

思いつつも、

説明されたらそれはそれで

想像で痛みが倍増したかもしれない。

 

とにかく無事に出産出来たことを

感謝した。

 

出産予定日の当日朝11時の事だった。