自由を求めた犬

昔じいさんの家に

キンコと呼んでいたメスの柴犬がいた。

 

何故キンコかというと

飼っていた先代の犬がキンタだったからだ。

 

じいさんは

度々 余った犬や、

捨てられ弱っていた犬などを引き取っては

世話をしていた。

 

じいさんは結構短気で、

声が大きく、犬の扱いが雑だったので、

もともと人間にいじめられて弱っていた

キンコは、ビクビクしながら

エサを食べていた。

 

そんなキンコとじいさんの田舎に

行くことになった。

 

車で犬と移動をしていたのだが、

ある時知り合いの家に

入って休んでいたところ、

キンコが玄関から飛び出して脱走した。

 

居間からキンコが

意気揚々と庭の方へ歩いていくのが見えた。

 

しかし私たちはすぐ戻ってくると思い

特に追わなかった。

 

でも時間が経っても

キンコは戻って来なかった。

よほど、じいさんが怖かったのだろう。

 

結構ショックな話である。

 

もう20年以上も前なので

キンコがうまく野生で暮らしていたとしても

もう亡くなっているだろう。

 

そのじいさんも少し前に亡くなった。

 

あの世でふたり再会しているだろうか。

いや、お互いあまり未練なさそうだったから

再会も興味なかったりして…