私を、私したしめる出来事

今から15年位前の話。

 

まだ祖父母が認知症になっておらず

お盆と正月だけ帰省していた、

大学生の冬。

 

あまり私の事を聞きいてこなかった

祖父が「お付き合いしている人はいるのか?」

と尋ねてきた。

 

私は今の旦那と付き合い始めた頃だった。

「いる」とだけ答えた。

 

その人に兄弟はいるのかなど訊いてきた。

なんでも、私が長女で女兄弟だから

この家を継ぐのは私しかいないというのだ。

 

「相手も一人っ子だよ」

と答えると

「それは困ったなあ」と

言ったのを覚えている。

 

もちろん、その時結婚を前提に付き合って

いたわけではないので、

本気で困っているようには見えなかったが

 

由緒正しい家柄でもなかったし、

自営業でもなかったし、

家を継ぐということがどういうことなのか

私はイマイチ分かっていなかった。

 

 

 

祖父は戦時中に父親を失い

小学校を卒業してすぐに働きに出、

兄弟と母親がいる家を

支えなければなかったらしい。

 

だからそれは相当な覚悟があったようだ。

 

もう一方の祖父母も地方から大阪へ出稼ぎにきて

結婚したが、親を最後まで看取るつもりで

田舎から親を呼び寄せ同居していたそうだ。

 

そういう先代に影響されてか、

私も自分たちの親と近くに住んでいる。

 

海外など、遠くに行って、

生活するという選択肢もあったはずだが、

いくつもの偶然と必然が重なって

そのような結果になっている。

 

実際、結婚するときには

もう祖父母は亡くなっていたり

認知症が進んでそこまで細かい

話はせずに、事は進んでいったが、

 

一緒に住むということが、

 

どういう形であれ、

最後を見捨てることは決してしない

という私の覚悟もある。

 

 

その出来事は、今の私を私たらしめる

結構重要なエピソードになっているような

気がする。